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不動産都市伝説 Ⅱ

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2020年9月28日

前回に引き続き、不動産投資家の皆様が気になっている都市伝説を解説していこうと思います。
今回は、巷で噂の2022年問題についてお話していきます。
いわゆる生産緑地に関する問題です。
2022年問題というのは、2022年になるとこの「生産緑地」の指定が解除されることで、一斉に売りに出され、供給過多で価格が暴落するという話です。
不動産の価格が暴落するなどとネット上で騒がれていますが本当なのでしょうか?
【生産緑地地区とは?】
都市計画によって「市街化するエリア」「市街化しないエリア」を自治体が決めている。
「市街化するエリア」では宅地にすべきいう位置付けになる。
都市計画上で、宅地にしなければいけない土地を農地として残すための制度です。
また、生産緑地の指定とは、生産緑地法(1974公布)に基づき、市街化区域内の土地のうち、一定の要件を満たす土地の指定制度(生産緑地地区制度)に沿って、管轄自治体(市町村)が土地や森林を指定することをいい、指定されるとその土地等は都市計画上、生産緑地地区という地域地区のひとつとなります。
では、生産緑地に指定されるとどうなるか?
生産緑地地区の指定がされると、以下のように制限されます。

【生産緑地指定による制限】
1. 農業を営むために必要な場合に限り、建築物の新築、改築、増築等が認められ、自由な売買やアパート建築などの農業目的以外での使用が出来ない。
30年間の営農を続けなければならない。
生産緑地としての都市計画の告示日から30年が経過した場合は自治体に買取りの申し出ができる。
2. 主たる従事者が死亡などで従事できなくなった場合は同様に自治体に買取りの申し出ができる。
3. 自治体が買取らない場合は他の農家などにあっせんする。
買取りを申し出た日から3ケ月以内に所有権移転されなかった場合は制限が解除される。1992年に生産緑地法が改正され、自治体から生産緑地に指定された農地では、固定資産税・都市計画税などがそれまで宅地並み課税であったのですが、一般農地と同様に「極めて低い」税額に抑えられることになりました。 この「極めて低い」税額とは、どのくらい低いかというと、通常の宅地に比べて100分の1以下になることも普通です。
また、相続税の納税猶予措置などが適用されます。
しかも、終生、営農を続けるならばその猶予された相続税は納める必要がないのです。
都市部の農地に対する非常に大きい優遇制度です。
そして、2022年に多くの生産緑地が指定解除となります。
市街化区域内での農地を確保するのが生産緑地ですが、生産緑地の指定は2022年に転機を迎えます。
というのは、1992年に生産緑地法が改正されたときに、生産緑地の指定期間が30年と定められたため、生産緑地の8割が2022年に指定解除を迎えると言われているのです。

【ポイント】
2022年に生産緑地の8割が2022年に指定解除となる予定。
さらに、2022年問題が起こる経緯は・・・
生産緑地の指定期間が30年を迎えると、地主は自治体に買取り請求を行うことができます。が、自治体も財源などの問題から購入は困難な事例が多くでることが予想されます。
自治体が買い取れない場合は営農者にあっせんを行うことになりますが、それもうまくいかない場合、生産緑地の指定が解除されます。
すると地主は、今まで著しく低い固定資産税・都市計画税を享受し、相続税の納税猶予の特典があった生産緑地が宅地並みに課税されることになり、今まで生産緑地の指定を受けていた農地所有者である地主の納税額が跳ね上がることになります。この場合、地主の自己防衛策としては、農業を行なっていた農地を住宅やマンション用地にするのがもっともありそうな対策です。
というのは、もともと生産緑地は市街化区域の中にあり市街化を図る土地であったはずですから周囲の環境は住宅などの用地に向いていると考えられるのです。
その結果、短期間に3大都市圏内に開発用の大量の宅地が供給され、分譲住宅も賃貸住宅も供給過剰になって価格や賃料が下落することが予想されます。
それこそが、「2022年問題」です。
2022年問題への政府の対策に関しては、多くの生産緑地が解除されて、上記の懸念どおりに進めば混乱を招きます。
そこで、政府もこの件には色々と対応をしています。
まず、生産緑地法を改正する予定を組んでいる事が1つです。
政府もこの問題に取り組むべきと考え、対策を打ち、2017年5月に生産緑地法を改正しました。
そこで、気になるのがどのくらいの影響かということです。
考察していきたいと思います。
まず第一に生産緑地指定延長の可能性が強い。
結局、多くの地主が行動として何を選択するか、によりますから影響の程度は確実にはどうなるか何ともいえません。
しかし、多くの生産緑地を保有している地主は、指定延長する可能性が強いと見られています。国土交通省が、東京都23区でもとくに生産緑地が多い練馬区、世田谷区の農家を対象に、生産緑地の指定意向を把握する目的でアンケート調査を実施したそうです。
30年の指定期限が過ぎた場合、10年間の営農継続を条件に「特定生産緑地」として新たに指定延長するかを尋ねたところ、6割以上の人が「全て指定する」との調査結果があるようです。
一部の農地だけでも特定生産緑地の指定を受けて農業を続けていく意向を示した農家は8割にもなるそうです。
国が考えた施策は、2022年問題の影響を最小にしようとしているのですから、その狙いが実現すれば影響は軽微ということがいえると思われます。 土地を利用して事業に踏み切る一方で、リスクをいとわない地主は土地を活かして自ら事業をおこす選択もできます。
たとえ、宅地並みの課税を受けるとしても、他の大多数の宅地所有者と同等の条件になるだけですから別に不利な条件があるわけではありません。 ですから、住宅事業を行なったり、業に限らず、保有している土地を生かして別の事業をすることもできます。
また、単純に売却で得た資金を別の事業に投資することも可能でしょう。 この場合は生産緑地だった土地で開発が行われることになりますから、宅地の供給圧力が高まるでしょう。その場合、大半は住宅開発が行われることになると思われます。
しかし、このようなケースはあるとしてもそう多くはないのではないかと思われます。
影響は大きくないとの見方も2022年問題は懸念されているように起きるのでしょうか?
国土交通省のアンケート結果からもうかがえるように、多くの地主が「特定生産緑地制度」を活用して10年の延長を選ぶ選択をして、現在の農地としての利用がかなり続く可能性が高いと思われます。
その理由は、地主としても10年毎に更新し続ければ、相続税の納税猶予がこの先もずっと可能となり子孫に土地を渡していけるわけですから、ご先祖から受け継いだ土地を守っていけるという気持ちが強いのではないかと思われます。
農地を利用したコミュニケーションも日本だけでなく、米国などでも市民が菜園で野菜作りなどをすることで家族や友人たちとコミュニケーションを図る効用が見直されています。
また、都市部でも災害時に避難する場所としても緑の場所の確保が大切だという認識が高まって来ているように感じます。
そして、都市住民が家族と野菜作りを楽しんだり、地産地消のレストランや、野菜直売所を現代的に楽しむような場面が多くなるのではないでしょうか。
地主が自ら農業を行わなくとも「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」などを活用して、専門の農業の担い手に委託することも可能となるように政府が手を打っているため実現しやすいようになっています。
現金化したいと考えて土地を売却する地主は必ずいるでしょうが、先に記述したように2022年に日本で大量の生産緑地が一気に宅地として市場に出てくることは考えにくいと思われます。
そのため、2022年問題に限定すれば、現時点では多少の影響はあるにしても影響はそれほど大きくはないと予想します。
したがって、少子高齢化や人口減少、経済の停滞などの問題は別として、 2022年問題のみを理由として土地の価格が下落すると予想し、それがために急いで土地を売却することは、現時点では考えなくともよいと思われます。 ただし、地域によっては、生産緑地を所有している地主の行動が土地売却や宅地としての活用の情報がかなり増えてくることも考えられます。
それは、ご自宅や実家の地域周辺の宅地供給増のサインとなります。
ご自分の住んでいる地域がどのように推移するか情報収集に気をつけていきましょう。
ご興味がある方は是非、一度ご相談下さい。